家から歩いてすぐのところに、公園がある。
週に一回、そこのランニングコースを走っている。
一周500m、24週走って、12km走りきるのが習慣になっている。
信号がなく、安全なのが公園の良いところだが、同じ景色が巡ってくるのは退屈でもある。
Short Film 9
《ジャネーの法則》がピンとこない。どうして歳をとると時間の経過が早いのかという新仮説
12km、というと「すごいね」とみんな言ってくれるが
習慣と積み重ねとは侮れないもので
ちょっと走る人なら分かると思うが、人間3km走れるようになれば、12kmなんてすぐ越えられる壁なのだ。
問題は2つ。12km走るには結構時間がかかる、ということ。あとは、暇つぶしが欲しいところ。
1週目がもうすぐ終わる。
今は、あえて何も考えないようにする。
まだまだ先は長いからだ。
あと24倍も走るなど、考えたくもない。
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ところで、ジャネーの法則というのを知っているだろうか。
先日、同僚が教えてくれたものだ。
「年をとるほど、時間が経つのが早く感じられる」
その現象を、心理学者が数式化したものらしい。
ああ、2週目が終わる。
これをあと12回繰り返すとなると、気が遠くなる。
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歳をとると1年が早く感じるのは、その1年が人生に占める割合が小さくなるからだとか。
主観的に記憶される年月の長さは、年少者にはより長く、年長者にはより短く感じられる。
どういうことだって?
私も最初は「何言ってんだ?」と思った。
3週目おわり。
これをあと8回繰り返す。
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例えば、50歳の大人にとって一年の長さは人生の50分の1ほどだが
5歳の子どもにとっての一年間は、人生の5分の1に相当する。
つまり、50歳の大人にとっての10年間は、5歳の子どもにとっての1年間にあたる。
私は「極端だな」と思った。
6周、経過。
これをあと4回か。
10kmで物足りなくなり最近は12km走ってるのだが、
24周というのは、なんとも色んな数で割れてしまうので、残りの距離を憂う回数が多い。
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つまりは、生きてきた年数によって一年の相対的な長さがどんどん小さくなることによって、時間が早く感じるということなのだろう。そして、ここからが心理学者としての説得力。
人は経験したことがないことをやっているときは、それが強く意識に残り時間が長く感じさせるそうだ。
反対に、慣れてしまうと時間の長さが気にならなくなり、あっという間に時が過ぎたように感じる。
8週が終わる。
ようやっと3分の1が終わった。時計でいうなら1時間のうち20分たったところだ。
退屈なら、変な妄想してないで、音楽でも聴けばいいって?
音楽もpodcastもYoutubeも飽きたのだ。
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子どもの頃は初めて体験することばかりで、毎日が新鮮で新しい出会いや発見がある。
しかし、大人になるにしたがって、新しい経験をする機会が失われてしまう。
大人になると時間があっという間に過ぎ去ってしまったと感じるのは、日々の生活に新鮮味がなくなるからという考え方なのだ。
私は思った。つまりは、年をとっても毎日冒険のような人生を送っていれば、この現象は避けられるのではないか。
12週、ついに半分が終わった。
あと半分なら、今日も走りきることができそうだ。
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でもここで疑問に思った。
この法則、理論は分かるが、果たして本当に今まで生きてきた時間と相対的に考えているのだろうか。
私はともかく、妻なんて昔のことなどほとんど覚えていないぞ。
過去にとらわれる者と、とらわれない者で、ずいぶんと隔たりが出てきそうだ。
18週が終了。
4分の3が終わった。
ゴールが近づいてきたと思えるが、いや待てあと6周もある。油断は禁物だ。
そういえば、16周目で3分の2達成だったのに、気がつかなかったな。
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ここで問題なのは、自分がいつまで生きるかは、わからないということだ。
このランニングには12kmという終わりがある。
そこが大きく異なる点だ。
21周おわり、いよいよあと3周だ。
あと、何ぶんの何だ?
まあ、いいか。もうすぐってことで。
頭もだんだんとぼおっとしてきた。
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私はある仮説を立てた。
人は、平均寿命をもとに「だいたいどのくらい生きるか」を見当立てている。
そしてその残り命を憂うことで、生きる体感スピードが加速度的に増すのではないだろうか。
夏休みも、たしかそんな印象であった。半分が終わると、あっというまだ。
あと1周。
ここにきて毎回思うのだ。
序盤は「今日は走りきれるかな」前半は「長いな」と感じるのだが
もうあと1周ともなると、「早いな」「もう少し走ることもできそうなのにな」と考えている自分がいる。
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