第50話「にわかに起こるこの気持ちがたとえ偽善と呼ばれても」

 

ラグビーが沸いて、ルールも知らな
い人々が街中で騒いだ。画に描いた
ようなにわかファンでもいいと思う。
そこに感動や学びがあるのなら。

 

 

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宝くじが当たった無職、20歳、イギリス7ヶ月目

 

 

 

パラリンピックに向けて、特集番組などが多くなってきている。

そういう理由で自分が手を差し伸べたわけじゃないと信じたい。

とにかくさっき、目の前で男が倒れたのだ。

脚を引きずっている人だった。

 

 

 

気を失ったわけではなかったし、気分も悪そうには見えない。

でも、なんていうか、見たことのないような、変な倒れ方ではあった。

転ぶ寸前にスケボーからおりるような、そんな印象だった。

ぺたんと、上手に?

 

 

 

部活時代、倒れた仲間を立ち上がらせるみたいに

手を差し出して引っ張って起こそうとしたら

男がひどく驚いた。

親切さに、ではもちろんない。

 

 

 

「すみません、後ろから抱えるようにしてもらえませんか」

結構重いんですが、すみません、と男はまた謝った。

そして本当に重かった。

いや、体重がじゃない。

 

 

 

その人はおれよりも少し体格がいいくらいなので、

せいぜい65〜70kgだったと思う。

でも、友達をだっこするのとは全然ちがう。

よく寝ている子どもは重いなんていうが、それこそ気絶してる人の体のようだった。

 

 

 

ある程度、これくらいでいいかな、という高さで力を抜きそうになったが、

男はまだ立つ気配がない。

そして、自分の上体を限界まで反らせるようにして、男の腰の位置をさらに上方向に持っていって

はじめて立つことができた。

 

 

 

最初は気が付かなかったが、両脚とも義足だったんだと思う。

その男は丁寧に、とても丁寧にお礼を言った。

そして帰り道にぼうっとすることになる。

 

 

 

 

にわかファンみたいなもんだ。

この気持ちは、きっと明日には忘れてしまう。

そういう自分が、いつも嫌になる。

 

 

おれはまだ若いけども、もう死んだ友達もいて

墓参りに行けば、そいつの分まで生きなきゃ、頑張んなきゃって思うのに

あんまり、続かない。

 

 

自分の脚でどこにでも行けるのに

なんだってできるのに

 

 

できない約束はしない主義だ。

でも、ことあるごとに思い出すようにする。

そんな気持ちでこれを書いている。

 

 

 

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