STORY 5 「うしろ髪」


    

#5 『うしろ髪』








ちょきん。



切られたぼくらは、
ふわっと宙へ舞い上がり、
それから、ゆっくり、
床へと落ちた。




冬が来るんだから、もう少し待ってもよかったのに。



ぼくらがいないと、首もとが寒いよ?











A Girl Story 5
「うしろ髪」














分かってる。



きみはいつでも、思い立ったらすぐ行動。



突発的に伸ばし始めた時も、そうだった。











一度決めたら、徹底的に頑張るきみだから、



そりゃあ大切にしてもらった。










良質なシャンプー
被膜性、保湿性、安全面に優れたトリートメント
そして、優しいブロー。









ぼくらは嬉しくて、それはキラキラと輝いた。
(人間は、天使のわっかとか呼んでいる)










もう優しく撫でてもらえないのかと思うと、

とても残念で、ならない。












心残りは、他にもある。



残されたみんなのことだ。










ちょきんと切られた切り口の



あっち側とこっち側では、



毎回、こんなことを言い合っている。

















「あとは頼んだ!」














「任せておけ! またどこかで会おうぜ」





















床から見上げた彼女は、


ぼくらがいなくなったことで、


より一層可愛くなっていた。








その笑顔が見れたから、


これでよかったんだって、


思える















本当さ、強がってなんかない












本当さ。























彼女のうしろ姿を見送る。



ついさっきまで、一緒にいたのに。



背中はどんどん小さくなり、




そして、見えなくなった。












ほうきでさっと掃かれて


燃えるゴミ行きの切符をすぐに手渡されるはずのぼくらだったが




彼女のカットを担当した美容師は

足早に戻ってくると、





あろうことか、

ぼくらを手で拾い集め始めた。













そして、

小さな声で、たしかにこう言ったんだ。















「今まで、あの子を可愛くしてくれてありがとう。






 君たちのおかげで、あの子、もっと可愛くなれたから。」






















RIMG0493.JPG




















うん。

これでよかったんだ。





ぼくらは、冷たい床の上で、



主人の温もりと、あの笑顔を思い出していた。

























model     hair
hair&make   hiro, Rikiishi
story      Old Laugh Maker













STORY
#6

『目を背けないという遊び』

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